「人手不足でコア業務に集中できない」「専門スキルを持つ人材が社内にいない」といった課題を抱えていませんか?その解決策として注目される「外注」は、正しく活用すれば事業成長を加速させる強力な経営戦略となります。本記事は、初めて外注を検討する担当者様のための完全ガイドです。外注の基本的な意味や業務委託・派遣との違いから、コスト削減といったメリット、具体的な業務別の費用相場、優良な依頼先の探し方、おすすめのサービス、そして失敗しないための7つのステップまで網羅的に解説します。この記事を読めば、外注に関するあらゆる疑問が解消され、自社に最適な形で外注を成功させるための道筋が明確になるでしょう。
外注とは 業務委託や派遣との違いをわかりやすく解説
「外注」は、ビジネスシーンで頻繁に使われる言葉ですが、その意味や関連する契約形態を正しく理解できているでしょうか。特に「業務委託」や「派遣」との違いが曖昧な方も少なくありません。ここでは、外注の基本的な意味から、混同されがちな業務委託・派遣との明確な違いまで、わかりやすく解説します。
外注の基本的な意味
外注とは「外部発注」の略語で、自社の業務の一部を、社外の企業や個人に委託することを指す広範な言葉です。英語の「アウトソーシング(Outsourcing)」とほぼ同じ意味で使われます。法的に「外注契約」という名称の契約があるわけではなく、実際には後述する「業務委託契約」という形で契約を締結するのが一般的です。
ノンコア業務を外部の専門家に任せることで、自社のリソースを主要な事業(コア業務)に集中させ、生産性向上やコスト削減を図る経営手法として、多くの企業で活用されています。
業務委託との関係性
外注は、多くの場合「業務委託契約」という契約形態によって行われます。つまり、外注は「業務を外部に委託する」という行為そのものを指し、業務委託は「その行為を実行するための法的な契約」と捉えると理解しやすいでしょう。この業務委託契約は、民法で定められている「請負契約」と「準委任契約」の2種類に大別されます。
| 契約の種類 | 目的 | 報酬の対象 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 請負契約 | 仕事の「完成」 | 成果物 | Webサイト制作、システム開発、記事作成、デザイン制作など |
| 準委任契約 | 業務の「遂行」 | 業務時間・工数 | コンサルティング、経理代行、カスタマーサポート、人事労務など |
請負契約は、Webサイトやソフトウェアといった「成果物」を完成させ、納品することを目的とします。そのため、契約内容どおりの成果物が納品されない限り、原則として報酬は支払われません。一方、準委任契約は、コンサルティングや事務作業といった特定の業務を、善良な管理者の注意をもって遂行すること自体を目的とします。こちらは業務を行った時間や工数に対して報酬が支払われるのが特徴です。どちらの契約形態が適切かは、依頼したい業務内容によって異なります。
派遣との明確な違い
外注(業務委託)と派遣は、社外の人材を活用する点で似ていますが、決定的な違いがあります。それは「指揮命令権」がどこにあるかです。
| 外注(業務委託) | 派遣 | |
|---|---|---|
| 契約形態 | 業務委託契約 | 労働者派遣契約 |
| 指揮命令権 | 受託者(外注先) | 派遣先企業(自社) |
| 目的 | 成果物の完成や業務の遂行 | 労働力の確保 |
| 特徴 | 業務の進め方は外注先に一任される。直接的な指示はできない。 | 自社の社員と同様に、業務に関する具体的な指示を出せる。 |
外注(業務委託)の場合、発注者と受注者は対等な事業者間の関係です。そのため、発注者(自社)は、仕事の進め方や労働時間について、受注者(外注先)に細かく指示することはできません。指揮命令権はあくまで受注者側にあります。一方、派遣の場合は、派遣会社と雇用関係にあるスタッフが派遣先企業(自社)で業務を行いますが、業務に関する指揮命令権は派遣先企業(自社)にあります。そのため、自社の社員と同じように、業務の具体的な指示を出すことが可能です。この指揮命令権の所在を正しく理解しないと、偽装請負などの法律違反につながる恐れがあるため、注意が必要です。
企業が外注を活用するメリットとデメリット
業務の外注は、多くの企業にとって事業成長を加速させるための有効な選択肢です。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、メリットだけでなくデメリットも正しく理解し、事前に対策を講じることが不可欠です。ここでは、外注を検討する上で必ず押さえておきたいメリットとデメリットを詳しく解説します。
外注で得られる5つの大きなメリット
まずは、企業が外注によって得られる代表的な5つのメリットを見ていきましょう。これらを活用することで、競争優位性を確立し、持続的な成長基盤を築くことが可能になります。
コア業務への集中
企業活動には、利益に直結する「コア業務」と、それを支える「ノンコア業務」が存在します。ノンコア業務(例:経理、給与計算、データ入力など)を外部の専門家に委託することで、社員は自社の強みである商品開発やサービス改善、営業活動といったコア業務にリソースを集中させることができます。これにより、組織全体の生産性が向上し、事業の成長スピードを高めることにつながります。
人件費や設備費などのコスト削減
社員を一人雇用すると、給与だけでなく社会保険料や福利厚生費、研修費など、給与額面の1.5倍から2倍のコストがかかると言われています。外注であれば、必要な業務を必要な期間だけ依頼できるため、固定費であった人件費を変動費としてコントロールできます。また、専門的な業務に必要な高価なソフトウェアや機材を自社で用意する必要がなくなり、設備投資にかかるコストも大幅に削減可能です。
社内にはない専門性の確保
特定の分野において、高度な専門知識や技術を持つプロフェッショナルを即戦力として活用できる点は、外注の大きな魅力です。例えば、最新のSEO対策や高度なプログラミング技術、法改正に対応した経理業務など、自社で一から人材を育成するには時間とコストがかかる専門分野でも、外注なら迅速に高品質な成果を期待できます。これにより、サービスの質が向上し、顧客満足度の向上にも貢献します。
スピーディーな人材確保と柔軟な組織体制
新規事業の立ち上げや、季節的な繁忙期など、急な業務量の増加に直面した際、採用活動を行っていてはビジネスチャンスを逃しかねません。外注を活用すれば、採用にかかる時間や手間をかけることなく、必要なスキルを持つ人材を迅速に確保できます。これにより、市場の変化に素早く対応できる、柔軟でスリムな組織体制を維持することが可能になります。
採用と教育の工数削減
正社員や契約社員の採用には、求人広告の出稿、書類選考、複数回の面接といった多くのステップがあり、人事担当者や現場責任者に大きな負担がかかります。採用後も、新人研修やOJT(On-the-Job Training)などの教育コストは避けられません。外注であれば、これらの採用と教育に関わる一連のプロセスを丸ごと省略できる’mark>ため、社内のリソースを他の重要な業務に振り分けることができます。
知っておくべき外注の3つのデメリットと対策
外注には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。しかし、これらのリスクは事前に対策を講じることで十分に回避・軽減することが可能です。ここでは、代表的な3つのデメリットとその具体的な対策をセットで解説します。
| デメリット | 具体的な対策 |
|---|---|
情報漏洩のリスク |
業務委託に伴い、企業の機密情報や顧客の個人情報を外部の事業者と共有するため、情報漏洩のリスクは常に存在します。特に近年はサイバー攻撃も巧妙化しており、外注先のセキュリティ管理体制が不十分な場合、重大なインシデントにつながる恐れがあります。 対策として、契約締結時に必ず秘密保持契約(NDA)を交わすことが必須です。加えて、プライバシーマーク(Pマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証の取得状況を確認するなど、外注先のセキュリティポリシーを事前にしっかりとチェックしましょう。 |
社内にノウハウが蓄積されにくい |
特定の業務を外部に「丸投げ」してしまうと、業務の進め方や問題解決のプロセスがブラックボックス化し、社内に知見やスキルが蓄積されません。その結果、外注先への依存度が高まり、将来的に自社で業務を内製化したいと考えた際に大きな障壁となります。 対策として、定期的な報告会や進捗確認ミーティングを設定し、業務プロセスや成果に至った背景を共有してもらう仕組みを作りましょう。また、業務マニュアルや手順書といったドキュメントの作成・納品を契約内容に含めることも、ノウハウを社内に残す上で非常に有効です。 |
コミュニケーションコストの発生 |
社内の人間同士とは異なり、外部の担当者とのやり取りには、物理的な距離や文化の違いから、認識の齟齬が生まれやすい側面があります。指示が正確に伝わらなかったり、細かなニュアンスが共有できなかったりすることで、期待と異なる成果物が納品され、手戻りが発生するなどのコミュニケーションコストがかかる場合があります。 対策として、定例会議の実施や、Slack・Chatworkといったビジネスチャットツールを導入し、気軽に相談・報告ができる体制を構築することが重要です。また、依頼の初期段階で業務の目的やゴール、具体的な要件を明確に定義した資料(要件定義書)を用意することで、お互いの認識のズレを最小限に抑えることができます。 |
こんな業務も頼める 外注可能な業務内容の具体例
「外注」と一言でいっても、その対象となる業務は多岐にわたります。かつては専門的な一部の業務に限られていましたが、現在では企業のあらゆる部門の業務を外注することが可能です。ここでは、具体的にどのような業務を外注できるのか、代表的な4つのカテゴリに分けて詳しく解説します。
IT・Webサイト制作・開発関連の業務
IT関連の業務は、専門的な知識や技術が不可欠なため、外注が最も活用されている分野の一つです。自社に専門部署や担当者がいない場合でも、外部のプロフェッショナルに依頼することで、高品質なシステムやWebサイトを構築できます。企画段階から開発、その後の保守・運用まで一貫して任せることも可能です。
| 業務内容 | 主な依頼内容の例 |
|---|---|
| Webサイト制作 | コーポレートサイト、サービスサイト、LP(ランディングページ)、採用サイトなどの企画・デザイン・構築 |
| システム・アプリ開発 | 業務効率化システム、顧客管理システム(CRM)、スマートフォンアプリ(iOS/Android)などの要件定義・設計・開発 |
| ECサイト構築 | EC-CUBEやShopifyなどのプラットフォームを利用したオンラインストアの構築・カスタマイズ |
| 保守・運用 | サーバー監視、セキュリティ対策、ソフトウェアのアップデート、コンテンツ更新、障害対応 |
デザイン・動画編集などクリエイティブ関連の業務
企業のブランドイメージや販促活動に直結するクリエイティブ制作も、外注に適した業務です。専門的なデザインツールや動画編集ソフトを扱うスキルはもちろん、トレンドを捉える感性や表現力が求められます。単発の制作依頼から、月額での継続的なデザインパートナーとしての依頼まで、柔軟に対応してくれる外注先が多いのが特徴です。
| 業務内容 | 主な依頼内容の例 |
|---|---|
| グラフィックデザイン | ロゴ、名刺、パンフレット、チラシ、ポスター、バナー広告などのデザイン制作 |
| イラスト制作 | Webサイトや資料に使用する挿絵、キャラクターデザイン、アイコン制作 |
| 動画編集・制作 | YouTube動画、商品・サービス紹介動画、マニュアル動画、アニメーション動画の企画・撮影・編集 |
記事作成・SEO対策などマーケティング関連の業務
Web集客や売上向上のために不可欠なデジタルマーケティングも、専門性が高く成果が出るまでに時間がかかるため、外注のニーズが高い分野です。特にコンテンツマーケティングにおける記事作成や、専門的な知識が必要なSEO対策、広告運用などはプロに任せることで効率的に成果を目指せます。自社のリソースを割かずに、最新のノウハウに基づいた戦略的なマーケティング施策を実行できる点が大きな魅力です。
- SEO記事作成・コンテンツ制作
- オウンドメディアの運用代行
- Web広告(リスティング広告・SNS広告など)の運用代行
- SNSアカウント(Instagram, X, Facebookなど)の運用代行
- メールマガジンの作成・配信代行
- マーケティング戦略の立案・コンサルティング
経理・人事・総務などバックオフィス関連の業務
企業の根幹を支えるバックオフィス業務も、外注が可能です。これらの業務は、日々の定型的な作業が多く、ノンコア業務(企業の中心的な活動以外の業務)に分類されることが少なくありません。バックオフィス業務をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスなどに外注することで、社員はより生産性の高いコア業務に集中できます。
- 経理業務:記帳代行、請求書発行、経費精算、月次・年次決算サポート
- 人事・労務業務:給与計算、社会保険手続き、入退社手続き、採用代行(RPO)
- 総務業務:データ入力、書類作成・管理、電話・メール対応、スケジュール管理(オンライン秘書)
【業務別】気になる外注の費用相場一覧
外注を検討する上で最も気になるのが「費用」ではないでしょうか。しかし、外注費用は依頼する業務内容、求める品質、依頼先の種類(法人か個人か)など、さまざまな要因によって大きく変動します。ここでは、代表的な業務を外注した場合の費用相場を、依頼先や作業内容別に解説します。あくまで一般的な目安として、予算策定の参考にしてください。
Webサイト制作を外注する場合の費用相場
Webサイト制作は、サイトの種類や規模、実装する機能によって費用が大きく異なります。例えば、数ページのシンプルなコーポレートサイトと、決済機能や会員機能を持つ大規模なECサイトとでは、開発工数が全く違うため費用も桁が変わることがあります。依頼先も、個人のフリーランスに頼むか、実績豊富な制作会社に頼むかで費用感が変わります。サイトの種類や機能、デザインの作り込み具合によって費用は大きく変動するため、依頼前に要件をしっかり固めることが重要です。
| サイトの種類 | 費用相場(フリーランス) | 費用相場(制作会社) |
|---|---|---|
| LP(ランディングページ) | 10万円~30万円 | 30万円~80万円 |
| コーポレートサイト(10P程度) | 20万円~60万円 | 50万円~150万円 |
| オウンドメディア(CMS構築) | 40万円~100万円 | 100万円~300万円 |
| ECサイト(小~中規模) | 50万円~200万円 | 200万円~1,000万円以上 |
記事作成(ライティング)を外注する場合の費用相場
記事作成の費用は、「文字単価」または「記事単価」で算出されるのが一般的です。Webメディアの記事作成では文字単価制が多く、ライターのスキルや経験、記事の専門性によって単価が変動します。専門性が高い分野や取材・インタビューが必要な場合は、費用が高くなる傾向にあります。SEOを意識した構成案の作成や画像の選定などをセットで依頼する場合は、その分の費用が上乗せされます。
| 料金体系・ライターのレベル | 費用相場 | 特徴 |
|---|---|---|
| 文字単価(初心者~) | 1.0円~1.5円 | 実績の少ないライターや、専門性を問わない一般的な内容の場合。 |
| 文字単価(中級者~) | 2.0円~4.0円 | SEOの知識があり、一定の品質が担保できるライター。 |
| 文字単価(専門家・上級者) | 5.0円以上 | 特定の分野で深い知見を持つ専門家や、著名なライター。 |
| 記事単価 | 5,000円~10万円以上 | 構成案作成や画像選定などを含めた1記事あたりの料金。作業範囲により大きく変動。 |
システム開発を外注する場合の費用相場
システム開発の費用は、開発するシステムの規模や複雑さによって大きく変動するため、一概に「いくら」とは言えません。一般的には、エンジニアやプログラマーのスキルを時間単位で計算する「人月単価」をベースに見積もりが作成されます。1人のエンジニアが1ヶ月稼働した場合を「1人月」とし、例えば人月単価80万円のエンジニアが3ヶ月稼働すれば、240万円が開発費の目安となります。開発するシステムの要件定義をいかに明確にするかが、最終的な費用を左右する重要なポイントです。
| エンジニアのスキルレベル | 人月単価の相場 |
|---|---|
| ジュニアクラス(実務経験1~3年) | 60万円~80万円 |
| ミドルクラス(実務経験3~5年) | 80万円~120万円 |
| シニアクラス(実務経験5年以上) | 100万円~160万円以上 |
経理代行を外注する場合の費用相場
経理代行は、依頼する業務範囲によって料金が設定されていることがほとんどです。日々の記帳代行のみを依頼するのか、給与計算や年末調整、さらには決算申告まで任せるのかで費用は大きく変わります。料金体系は月額固定制が主流ですが、自社の従業員数や取引量(仕訳数)によって料金が変動する従量課金制も多く採用されています。
| 依頼する業務範囲 | 月額費用の相場(目安) |
|---|---|
| 記帳代行のみ | 1万円~/月 |
| 記帳代行+給与計算・振込代行 | 3万円~/月 |
| 記帳代行+決算申告 | 5万円~/月+決算料(年1回) |
| 経理業務全般(バックオフィス全般) | 10万円~/月 |
外注先の探し方と依頼先の種類
外注を成功させるためには、自社の目的や依頼したい業務内容に合った依頼先を見つけることが不可欠です。外注先を探す方法は多岐にわたりますが、主に「クラウドソーシング」「エージェント・紹介サービス」「専門企業への直接依頼」の3つの種類に大別できます。それぞれの特徴を理解し、最適なパートナーを選びましょう。
クラウドソーシングサービスで探す
クラウドソーシングとは、インターネット上で不特定多数の個人やフリーランスに業務を委託できるプラットフォームサービスです。国内では「クラウドワークス」や「ランサーズ」などが有名で、多くの企業や個人が利用しています。
最大の魅力は、比較的低コストで、手軽に発注できる点です。ライティングやデザイン、データ入力といった単発のタスクから、小規模なWebサイト制作まで、多種多様な業務を依頼できます。コンペ形式でデザイン案を募集したり、プロジェクト形式で継続的な依頼をしたりと、柔軟な発注形態が用意されているのも特徴です。ただし、登録しているワーカーのスキルや経験にはばらつきがあるため、依頼先の選定には注意が必要です。実績や評価をしっかりと確認し、コミュニケーションを密に取ることが成功の鍵となります。
エージェント・紹介サービスを利用する
エージェント・紹介サービスは、企業の要望をヒアリングした上で、登録しているフリーランスや副業人材の中から最適な人材を紹介してくれるサービスです。特にITエンジニアやWebマーケター、デザイナーといった専門職に特化したサービスが多く存在します。
エージェントが事前にスキルや実績のスクリーニングを行っているため、質の高い専門人材と出会いやすいのが大きなメリットです。自社で候補者を探す手間が省け、採用のミスマッチを大幅に減らすことができます。契約形態の調整や交渉を代行してくれる場合もあり、初めて専門スキルを持つフリーランスに依頼する企業にとっては心強い存在です。一方で、仲介手数料が発生するため、クラウドソーシングに比べて費用は高くなる傾向にあります。専門性の高い業務を安心して任せたい場合や、即戦力となる人材をスピーディーに確保したい場合に適した方法です。
専門の制作会社やBPO企業に直接依頼する
Webサイト制作会社やシステム開発会社、あるいは経理や人事といったバックオフィス業務を専門に請け負うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業へ直接依頼する方法です。個人ではなく、組織として業務を請け負ってくれるため、安定した品質と納品体制が期待できます。
この方法の利点は、大規模なプロジェクトや、業務プロセス全体をまとめて委託できる点にあります。例えば、大規模なECサイト構築や基幹システムの開発、月次決算から給与計算までの一連の経理業務など、複雑で専門的な知見が求められる場合に最適です。チーム体制で対応してくれるため、品質管理や進捗管理も安心して任せられます。ただし、個人への依頼に比べて費用は高額になり、契約内容も複雑になることが多いため、依頼前には複数の企業から相見積もりを取り、慎重に比較検討することが重要です。
これらの探し方にはそれぞれ一長一短があります。以下の表で特徴を比較し、自社の状況に最も合った方法を選びましょう。
| 依頼先の種類 | 主な特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| クラウドソーシング | Web上で不特定多数の個人に発注するプラットフォーム | ・低コストで手軽 ・多様な人材が見つかる ・単発、小規模な業務向き | ・品質やスキルにばらつき ・コミュニケーションコストがかかる場合がある |
| エージェント・紹介サービス | 企業の要件に合う専門人材を紹介してもらうサービス | ・質の高い人材が見つかりやすい ・探す手間が省ける ・ミスマッチが少ない | ・仲介手数料が発生する ・クラウドソーシングより高コスト |
| 専門の制作会社・BPO企業 | 特定の業務領域に特化した企業に業務ごと委託 | ・品質が安定している ・大規模、長期的な依頼が可能 ・管理の手間が少ない | ・費用が高額になりやすい ・柔軟な対応が難しい場合がある |
【目的別】おすすめの外注サービス12選
外注先の選択肢は多岐にわたりますが、自社の目的や依頼したい業務内容に合わせて最適なサービスを選ぶことが、外注を成功させるための重要な鍵となります。ここでは「手軽さ」「専門性」「IT開発」「バックオフィス」という4つの目的別に、合計12のおすすめ外注サービスを厳選してご紹介します。自社の課題に合ったプラットフォームを見つける参考にしてください。
手軽に始めたい人向けのクラウドソーシング
クラウドソーシングは、インターネット上で不特定多数の働き手に業務を依頼できるプラットフォームです。比較的低コストで、ライティングやデザイン、データ入力といった単発の小さな業務から気軽に依頼できるため、初めて外注を利用する企業や、急なリソース不足に対応したい場合に最適です。
クラウドワークス
日本最大級のクラウドソーシングサイトで、案件数・登録者数ともに業界トップクラスを誇ります。仕事のカテゴリは200種類以上と幅広く、コンペ形式やプロジェクト形式など多様な依頼方法が選べるため、あらゆるニーズに対応可能です。
ランサーズ
クラウドワークスと並ぶ大手プラットフォームで、質の高いフリーランスが多く在籍しているのが特徴です。特にWeb制作やデザイン、マーケティング関連の案件が豊富で、実績やスキルから信頼できる依頼先を探しやすい仕組みが整っています。
ココナラ
個人のスキルを気軽に売買できる「スキルマーケット」の代表格です。ロゴ作成5,000円から、といったようにサービス内容と価格が明確に提示されているため、予算が限られている場合や、お試しで依頼したい場合に非常に便利です。クリエイティブ系の依頼に強みがあります。
専門スキルを持つフリーランスを探せるサービス
特定の分野で高い専門知識やスキルを持つフリーランスと企業をマッチングさせるサービスです。エージェントが介在し、企業の要件に合った最適な人材を提案してくれるケースが多く、ミスマッチを防ぎながら即戦力となるプロフェッショナルを確保したい企業におすすめです。
レバテックフリーランス
ITエンジニアやWebデザイナーに特化したフリーランスエージェントです。高単価な専門案件が豊富で、企業の開発プロジェクトを強力にサポートします。専門のコーディネーターがスキルや実績を丁寧に見極めてくれるため、安心して依頼できます。
Workship(ワークシップ)
デザイナー、エンジニア、マーケター、編集者など、デジタル領域のプロフェッショナル人材と出会えるマッチングサービスです。週1〜3日程度の稼働やリモートワークなど、柔軟な働き方を希望する優秀な人材が多く登録しています。
シューマツワーカー
「週末だけ」「平日の夜だけ」といった形で稼働できる副業・複業人材に特化しているのが大きな特徴です。スタートアップや中小企業が、正社員採用では難しい優秀な人材の力を必要な分だけ借りる、といった活用法で注目されています。
高品質なIT開発チームを構築できるサービス
Webサービスやアプリケーション開発など、専門的なITプロジェクトを推進するための開発チームを外部に構築するサービスです。「ラボ型開発」と呼ばれる、月額定額で専属チームを確保する形態が人気を集めています。優秀なエンジニアチームを迅速に確保し、仕様変更にも柔軟に対応しながら高品質なプロダクト開発を実現したい場合に有効です。
CLOUDBUDDY
厳選された海外IT人材による専属の開発チームを最短2週間で提供するサービスです。日本人ディレクターがブリッジ役となることで、言語や文化の壁を越えたスムーズなコミュニケーションを実現。国内で採用するよりもコストを抑えつつ、質の高い開発が可能です。
モンスター・ラボ
世界20カ国以上に開発拠点を持ち、グローバルな知見を活かしたデジタルコンサルティングやプロダクト開発を得意とします。課題のヒアリングから戦略立案、開発、運用までワンストップで支援してくれるため、大規模なプロジェクトも安心して任せられます。
Toptal(トップタル)
独自の厳しい審査を通過した「世界トップ3%」のフリーランスエンジニアやデザイナーのみが在籍するプラットフォームです。最高レベルのスキルを持つ人材を迅速にプロジェクトへアサインできるため、技術的な難易度が非常に高い開発を依頼したい場合に最適です。
バックオフィス業務に強いBPOサービス
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、経理、人事、総務、コールセンターといったノンコア業務のプロセス全体を専門企業に委託する形態です。ノンコア業務をまとめて外部に委託することで、大幅なコスト削減と業務効率化を図り、企業は本来注力すべきコア業務にリソースを集中できます。
CASTER BIZ(キャスタービズ)
秘書、人事、経理、Web運用など、幅広い業務に対応するオンラインアシスタントサービスです。採用した優秀なアシスタントがチーム体制で業務を遂行するため、属人化を防ぎ、安定した業務品質を提供します。必要な時に必要な分だけ依頼できる手軽さも魅力です。
HELP YOU(ヘルプユー)
こちらもチーム制のオンラインアウトソーシングサービスで、総務、経理、人事・採用から営業サポート、メディア運用まで、多岐にわたる業務に対応しています。厳しい採用試験を突破したスタッフが、企業の「困った」を解決するための最適なプランを提案してくれます。
NOCアウトソーシング&コンサルティング
創業30年以上の実績を持つBPOサービスの老舗企業です。経理や人事給与、総務といったバックオフィス業務全般に強みを持ち、企業の状況に合わせたオーダーメイドのサービスを提供します。セキュリティ体制も万全で、大企業や官公庁からの信頼も厚いです。
初めての外注を成功に導く7ステップ
外注を成功させるためには、事前の準備と計画的な進行が不可欠です。ここでは、初めて外注する方がつまずきやすいポイントを押さえ、成功に導くための具体的な7つのステップを解説します。この手順に沿って進めることで、トラブルを未然に防ぎ、期待通りの成果を得られる可能性が高まります。
ステップ1 外注する業務範囲と目的を明確にする
外注を検討する最初のステップは、「なぜ外注するのか(目的)」と「どの業務を任せるのか(範囲)」を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、適切な依頼先を選定できず、成果を正しく評価することもできません。
例えば、「コア業務に集中するため、ノンコア業務を切り離したい」「社内にない専門知識を活用して、Webサイトからの問い合わせを増やしたい」「繁忙期のみリソースを増強し、人件費を最適化したい」など、具体的な目的を言語化しましょう。その上で、社内で担うべき業務と、外部に委託する業務の境界線を具体的に定義することが重要です。この切り分けが、後の工程すべての土台となります。
ステップ2 依頼内容をまとめた要件定義書を作成する
目的と業務範囲が固まったら、依頼内容を具体的に記した「要件定義書(RFP:Request for Proposal)」を作成します。これは、外注先に正確な意図を伝え、認識の齟齬を防ぐための設計図となる非常に重要な書類です。口頭での依頼は「言った・言わない」のトラブルに繋がりやすいため、必ず書面にまとめましょう。
要件定義書には、主に以下の項目を盛り込みます。
| 項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| プロジェクトの背景・目的 | なぜこの業務を外注するのか、最終的にどのような状態を目指すのかを記載。 |
| 具体的な業務内容 | 依頼するタスクを詳細にリストアップ。「記事作成10本」「バナーデザイン5点」など。 |
| 成果物の仕様 | 納品物の形式(Word、jpegなど)、満たすべき品質基準(KPI、トンマナなど)を定義。 |
| 役割分担 | 自社と外注先のどちらが何を担当するのかを明確にする。 |
| 提供可能な素材 | 画像素材、過去の資料、参考サイトなど、業務遂行に必要な情報や素材を提示。 |
| 予算・納期 | 想定している費用の上限と、最終的な納品希望日を記載。 |
ステップ3 予算と納期を設定する
要件定義書の内容に基づき、具体的な予算と納期を設定します。あらかじめ業務別の費用相場を把握しておくと、現実的な予算計画を立てやすくなります。ただし、安さだけで依頼先を決めると、品質が伴わなかったり、後から追加費用が発生したりするリスクがあるため注意が必要です。品質とコストのバランスを考慮し、適切な予算を確保しましょう。
納期については、外注先の作業期間だけでなく、自社の確認・フィードバック期間や修正対応の期間なども含めて、余裕を持ったスケジュールを組むことが成功の秘訣です。
ステップ4 依頼先候補を選定する
予算と納期が確定したら、いよいよ依頼先の選定に入ります。クラウドソーシング、エージェント、専門の制作会社など、依頼先の種類は多岐にわたります。それぞれの特徴を理解し、今回の外注の目的や業務内容に最も適した方法で候補を探しましょう。候補を選定する際は、企業のウェブサイトやポートフォリオを確認し、過去の実績や得意分野が自社のニーズと合致しているかを慎重に見極めることが重要です。特に、同業種・同規模の企業との取引実績があれば、有力な候補となり得ます。
ステップ5 見積もりを依頼し比較検討する
複数の候補先に要件定義書を送付し、見積もりを依頼します。このとき、1社だけでなく必ず2〜3社から見積もりを取る「相見積もり」を行うことを強く推奨します。これにより、費用相場の妥当性を判断できるだけでなく、各社の提案内容を比較検討できます。
見積書を比較する際は、金額の安さだけで判断してはいけません。作業範囲はどこまでか、どのような体制で業務を進めるのか、納品後のサポートは含まれているかなど、提案内容全体を精査し、最もコストパフォーマンスが高く、信頼できるパートナーを選びましょう。
ステップ6 業務委託契約を締結する
発注先が決定したら、必ず「業務委託契約」を締結します。契約書は、万が一のトラブルから自社を守るための重要な盾となります。契約書には、双方の合意内容を明確に記載する必要があります。
| 主な契約項目 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 業務内容と成果物 | 要件定義書に基づき、委託する業務範囲と納品物の仕様が明記されているか。 |
| 報酬と支払条件 | 金額、税区分(税込/税抜)、支払時期(納品後末締め翌末払いなど)、支払方法が明確か。 |
| 納期と納品方法 | 最終納期と、データでの納品方法などが定められているか。 |
| 知的財産権の帰属 | 成果物の著作権などの権利がどちらに帰属するかが明記されているか。 |
| 秘密保持義務(NDA) | 業務上知り得た情報の取り扱いについて定められているか。 |
| 契約解除条件 | どのような場合に契約を解除できるかが規定されているか。 |
契約内容に不明な点があれば、必ず事前に確認・交渉しましょう。必要に応じて、法務担当者や弁護士にリーガルチェックを依頼することも有効です。
ステップ7 業務開始後の円滑なディレクション
契約を締結し、業務がスタートした後も気を抜いてはいけません。外注は「丸投げ」ではなく、発注者側の適切なディレクションが成功を左右します。定期的な進捗確認のミーティングを設定したり、SlackやChatworkといったコミュニケーションツールを統一したりして、円滑に連携できる体制を構築しましょう。
質問への迅速な回答や、成果物に対する具体的で建設的なフィードバックを心がけることで、外注先はパフォーマンスを発揮しやすくなります。発注者と受注者という関係性を超え、同じ目標に向かうパートナーとして良好な関係を築くことが、外注を成功に導く最後の、そして最も重要な鍵となります。
まとめ
本記事では、初めて外注を検討する方に向けて、その基本的な意味から業務委託や派遣との違い、具体的な費用相場、おすすめのサービスまでを網羅的に解説しました。外注を上手に活用することで、企業は「コア業務への集中」「コスト削減」「専門性の確保」といった多くのメリットを享受できます。これが、多くの企業が戦略的に外注を導入する理由です。
一方で、「情報漏洩のリスク」や「社内にノウハウが蓄積されにくい」といったデメリットも存在しますが、これらは事前の対策によって最小限に抑えることが可能です。外注を成功させる結論として最も重要なのは、何のために、どの業務を外注するのかという「目的の明確化」です。目的が曖昧なまま進めると、期待した成果が得られないばかりか、かえってコストが増大する危険性があります。
この記事でご紹介した「成功に導く7ステップ」を参考に、まずは自社の課題と外注したい業務内容の整理から始めてみてください。適切なパートナーと連携することで、外注は企業の成長を力強く後押しする有効な一手となるでしょう。
